マインドフルネスと瞑想の違いとは?種類と初心者向けのやり方
マインドフルネスは「今この瞬間に評価を加えず注意を向けている状態」、瞑想はそのための練習方法の総称です。両者の違い、MBSRの成り立ち、研究でわかっている効果の範囲、呼吸・ボディスキャン・歩行など種類別のやり方を解説します。
Key Pointsこの記事の要点
- マインドフルネスは心の状態や心のあり方、瞑想はその状態を育てるための練習方法の総称
- マインドフルネス瞑想は不安や抑うつを小〜中程度和らげる研究がある一方、集中力や体重への効果は根拠が不十分
- 初心者は呼吸に注意を向ける瞑想を1日5分から。眠る前ならボディスキャンも取り入れやすい
目次7
マインドフルネスは「今この瞬間の体験に、評価を加えずに注意を向けている状態」を指し、瞑想はそうした心の状態を育てるための練習方法の総称です。マインドフルネス瞑想は瞑想の一種で、マインドフルネスを育てることを目的にした方法だと整理するとわかりやすくなります。初心者は、呼吸に注意を向ける瞑想を1日5分から始めるのが現実的です。
結論:マインドフルネスは「状態」、瞑想は「練習の方法」
両者の違いは、目的があるかないかというよりも、「状態」を指す言葉か「方法」を指す言葉か、で整理するのが正確です。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| マインドフルネス | 今の体験に評価を加えず注意を向けている状態、心のあり方 | 会議中、相手の話と自分の焦りの両方に気づいている |
| 瞑想 | 注意や意識を整えるための練習方法の総称 | 座禅、呼吸瞑想、慈悲の瞑想など |
| マインドフルネス瞑想 | マインドフルネスを育てることを目的にした瞑想 | 呼吸瞑想、ボディスキャン、歩行瞑想 |
厚生労働省の統合医療情報サイト(eJIM)は、マインドフルネスを「判断をせずに今この瞬間に注意を向け続ける実践」と説明しています。
ここでのポイントは「評価を加えない」という部分です。たとえば、朝の会議前に「資料の数字が気になる」と考えが浮かんだとします。マインドフルネスでは、その考えを打ち消すことも、深追いすることもしません。「数字のことを考えている」と気づき、注意を今やっていることに戻します。
よくある「瞑想は無心になること」という説明は、正確ではありません。多くの瞑想で練習しているのは、考えを消すことではなく、注意がそれたことに気づいて戻すことです。
「瞑想には目的がなく、マインドフルネスには目的がある」という説明もよく見かけます。しかし、伝統的な瞑想にも、心を静める、洞察を深めるといった修行上の目的があります。一方、マインドフルネス瞑想でも、練習中は「リラックスしよう」「集中力を上げよう」と結果を求めすぎないことが大切だとされます。目的の有無で線を引くと、かえって混乱しやすくなります。
よくある誤解 「マインドフルネスは体の状態」という説明を見かけますが、指しているのは心の注意の向け方です。体の感覚に注意を向ける練習はありますが、マインドフルネスそのものは体の状態ではありません。
マインドフルネス瞑想はどこから来た?医療から職場へ
瞑想そのものは、仏教やヒンドゥー教などで数千年にわたって実践されてきました。坐禅やヨガの瞑想も、その流れにあります。
現在のマインドフルネス瞑想の土台をつくったのは、1979年に米国マサチューセッツ大学医学部で始まった「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」です。仏教の瞑想から宗教的な要素を切り離し、慢性的な痛みやストレスを抱える患者向けの8週間のプログラムとして体系化されました。
その後、うつ病の再発予防を目的にした「マインドフルネス認知療法(MBCT)」が開発されるなど、医療や心理療法の分野で研究が進みました。2000年代以降は、企業の研修や学校教育にも取り入れられるようになっています。
つまり、ビジネスの場で語られるマインドフルネスは、宗教的な修行そのものではなく、医療や心理学の研究を経て一般向けに整えられた練習方法です。信仰の有無に関係なく実践できます。
マインドフルネス瞑想の効果はどこまで確かめられている?
マインドフルネス瞑想の効果は、テーマによって根拠の強さがかなり違います。主な研究結果を整理します。
| テーマ | 研究からわかっていること | 根拠の強さ |
|---|---|---|
| 不安・抑うつ | 小〜中程度の改善が見られる | 中程度 |
| ストレス・心理的苦痛 | 改善の傾向がある | 低い |
| 睡眠 | 睡眠の質の改善に役立つ可能性 | 限定的 |
| 集中力・気分の向上 | 効果ははっきりしない | 不十分 |
| 体重 | 減量効果は限定的 | 不十分 |
2014年に米ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らが発表したメタ分析は、47件のランダム化比較試験(参加者3,515人)を分析しました。その結果、マインドフルネス瞑想のプログラムは、不安、抑うつ、痛みを小〜中程度改善するという中程度の根拠が示されました。一方で、前向きな気分、注意力、睡眠、体重については、効果を示す根拠が不十分でした。また、薬物療法や運動などほかの治療より優れているという根拠もありませんでした。
eJIMや米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、睡眠の質の改善に役立つ可能性がある一方、多くの研究は予備的で、結果は慎重に解釈する必要があるとしています。
どのくらい続ければよいかについては、参考になる研究があります。瞑想経験のない18〜45歳を対象にした米ニューヨーク大学のランダム化試験では、1日13分の音声ガイド付き瞑想を8週間続けた群で、ポッドキャストを聞いた対照群と比べて気分の落ち込みが減り、注意力や記憶の課題の成績が上がりました。ただし、4週間の時点では差が見られませんでした。小規模な研究の一つですが、短時間でも数週間単位で続けることが前提だと考えておくのがよいでしょう。
まとめると、「ストレスや不安を少し和らげる練習」としては一定の根拠がありますが、「仕事のパフォーマンスが劇的に上がる」といった宣伝文句には、現時点で十分な裏付けがありません。瞑想のメリットをもう少し詳しく知りたい人は、瞑想のメリットの記事も参考にしてください。
瞑想にはどんな種類がある?目的別の選び方
瞑想にはさまざまな種類があります。大きく分けると、一つの対象に注意を集める「集中型」と、浮かんでくる考えや感覚をそのまま観察する「観察型」があります。仏教の用語では、前者をサマタ瞑想、後者をヴィパッサナー瞑想と呼ぶこともあります。
初心者が取り入れやすいのは次の4つです。
| 種類 | 注意を向ける対象 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 呼吸の瞑想 | 鼻やお腹で感じる呼吸 | 朝、始業前、会議前 |
| ボディスキャン | 体の各部位の感覚 | 寝る前、疲れが抜けないとき |
| 歩行瞑想 | 足裏の感覚、体重移動 | 座るとそわそわする人、昼休み |
| 食べる瞑想 | 食べ物の色、香り、食感、味 | 食事の最初の一口 |
どれか一つが優れているわけではありません。生活の中に組み込みやすいものを選ぶのが、続けるうえで最も大切です。歩行瞑想は歩行瞑想のやり方、食べる瞑想はマインドフル・イーティングの記事で詳しく解説しています。
初心者向けのやり方:まず呼吸の瞑想を5分
最初の一歩には、呼吸の瞑想がおすすめです。道具も場所も選びません。
呼吸の瞑想(5分)
- 椅子に浅めに座り、背筋を軽く伸ばす。足裏は床につけ、手は太ももの上に置く
- 目を閉じるか、1メートルほど先の床に視線を落とす
- 鼻を通る空気、またはお腹のふくらみとへこみに注意を向ける
- 考え事に気づいたら「考えていた」と心の中でつぶやき、呼吸に戻る
- タイマーが鳴ったら、ゆっくり目を開けて周りの音や体の感覚を確かめる
呼吸を深くしたり、長くしたりする必要はありません。自然な呼吸をそのまま観察するのが基本です。5分の間に何十回も注意がそれるのは普通のことです。それに気づいて戻した回数が、そのまま練習量になります。
ボディスキャン(10分前後)
寝る前に取り入れやすいのがボディスキャンです。
- 仰向けになり、腕は体から少し離して手のひらを上に向ける
- 数回、自然な呼吸を感じる
- 左足のつま先から始め、足裏、足首、ふくらはぎ、膝、太ももと、順に注意を移していく
- 右足も同じように行い、腰、お腹、胸、背中、両腕、肩、首、顔へと進む
- 最後に体全体の感覚をぼんやりと感じ、手足を軽く動かして終える
各部位で「温かい」「重い」「何も感じない」など、感じたことをそのまま確認します。何も感じなくても失敗ではありません。途中で眠ってしまっても構いません。寝る前の瞑想については寝ながら瞑想の記事も参考になります。
食べる瞑想(1分)
食事の最初の一口だけ、色、香り、口に入れたときの食感、噛んだときの味の変化を順に感じます。一口を飲み込むまで、次の一口を箸で取りません。会食の席では難しくても、一人で食べる昼食なら試しやすい方法です。
仕事中の1分マインドフルネス
座って目を閉じる時間が取れない日でも、日常の動作をそのまま練習に変えられます。
- メールを送信する前に、手を止めて3回呼吸を感じる
- 会議室に入る前に、足裏が床についている感覚を確かめる
- エレベーターや信号を待つ間、肩と顎の力が入っていないか確認する
- コーヒーを飲むとき、最初の一口の温度と香りに注意を向ける
ポイントは、時間の長さではなく「今、自分が何をしているか」に気づく回数を増やすことです。1回は短くても、1日に何度も繰り返せば、注意を戻す練習の量は確保できます。
始める前に知っておきたい注意点
瞑想は比較的リスクの小さい練習とされていますが、まったく安全とは言い切れません。eJIMによると、2020年のレビューでは参加者の約8%が、瞑想に関連して不安や抑うつなどのネガティブな体験を報告していました。
- 強い不安、動悸、つらい記憶のよみがえりが起きたら、目を開けて中止する
- 体調が悪い日は、無理に座らず短い歩行瞑想に切り替える
- 長時間の集中的な瞑想合宿などは、経験のある指導者のもとで行う
受診の目安 気分の落ち込みや不眠が2週間以上続いている、仕事や生活に支障が出ている、という場合は、瞑想で何とかしようとせず、まず医療機関や産業医に相談してください。瞑想は治療の代わりにはなりません。
今日からやること
- スマートフォンのタイマーを5分にセットし、椅子に座って呼吸の瞑想を1回行う
- 考え事に気づいたら「考えていた」と心の中でつぶやき、呼吸に戻る
- 今夜、布団の中で足先から順にボディスキャンをしてみる
- 明日の昼食で、最初の一口だけ食べる瞑想を試す
- 3つのうち続けやすかったものを1つ選び、1週間毎日続ける
FAQよくある質問
Qマインドフルネスと瞑想は同じ意味ですか?
厳密には違います。マインドフルネスは今この瞬間の体験に評価を加えずに注意を向けている状態や心のあり方を指し、瞑想はそのための練習方法の総称です。日常会話では「マインドフルネス」がマインドフルネス瞑想の意味で使われることも多く、文脈で判断して構いません。
Qマインドフルネス瞑想は宗教ですか?
瞑想そのものは仏教などの宗教的な実践に由来しますが、医療や職場で使われるマインドフルネス瞑想は、宗教的な教えを切り離したプログラムとして作られています。信仰の有無に関係なく実践できます。
Q瞑想は1日何分やればいいですか?
初心者は1日5分程度から始めるのが現実的です。研究では1回13分を8週間続けたプログラムなどがありますが、決まった最低時間はありません。毎日続けられる長さを選ぶことを優先してください。
Q瞑想をして気分が悪くなることはありますか?
あります。瞑想関連の研究をまとめた2020年のレビューでは、参加者の約8%が不安や抑うつなどのネガティブな体験を報告していました。強い不安やつらい記憶がよみがえる場合は中止し、必要に応じて医療機関に相談してください。
参考資料
- 瞑想[各種施術・療法 - 一般] 厚生労働省『統合医療』に係る情報発信等推進事業(eJIM)
- Meditation and Mindfulness: Effectiveness and Safety 米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)
- Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis JAMA Intern Med(Goyal M ほか, 2014)
- Brief, daily meditation enhances attention, memory, mood, and emotional regulation in non-experienced meditators Behav Brain Res(Basso JC ほか, 2019)