03 RECOVER 睡眠・回復

睡眠の質を上げる食べ物はある?キウイ・バナナ・キムチの根拠と寝る前の食べ方

睡眠の質を上げる個別の食べ物は、厚生労働省の睡眠ガイド2023でもまだ特定されていません。キウイやトリプトファン、グリシンの研究の中身と限界を整理し、朝食と夜食のタイミング、寝る前に小腹がすいたときの選び方を解説します。

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Business Athlete 編集部
夜のダイニングテーブルに置かれた半分に切ったキウイと小鉢の豆腐の味噌汁、木のスプーン

Key Pointsこの記事の要点

  1. 睡眠ガイド2023は、睡眠の質の改善に寄与する個別の食品等は現時点で特定されていないとしている。
  2. キウイやトリプトファン、グリシンには睡眠との関連を示す研究があるが、小規模で、補助的な位置づけにとどまる。
  3. 効果がはっきりしているのは食べるタイミングで、朝食をとり、就寝直前の夜食を避けることが体内時計を整える。
目次7
  1. 睡眠の質を上げる食べ物はある?
  2. よく挙がる栄養素の根拠はどの程度?
  3. キウイ・バナナ・キムチ・チョコは睡眠に効く?
  4. 寝る前に食べても良い?夕食は何時間前まで?
  5. 朝食や寝不足は食事とどう関係する?
  6. 会食の多い日はどうする?
  7. 今日からやること

「これを食べれば睡眠の質が上がる」と言える食べ物は、今のところありません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、睡眠の質の改善に寄与する個別の食品は特定されていないとしています。キウイやトリプトファンなどには研究がありますが、規模が小さく補助的な位置づけです。眠りのために食事で変えるべきなのは「何を食べるか」より「いつ食べるか」で、朝食をとり、就寝直前の夜食を避けることが基本になります。

睡眠の質を上げる食べ物はある?

結論は「特定の食べ物はまだ見つかっていない」です。睡眠ガイド2023のQ&Aは、睡眠改善のためのおすすめの食事について、次のように答えています。

  • 海外では食事パターンと睡眠の質の研究があり、代表例に地中海食パターン(魚、野菜、果物、ナッツ・豆類が中心)がある
  • ただし、現時点で睡眠の質改善に寄与する個別の食品等は特定されていない
  • 主食・主菜・副菜を中心に、さまざまな食品を取り入れたバランスのよい食事を勧める

ネットでは「睡眠に効く食べ物ランキング」のような情報が多く出回っています。しかし国の指針の立場は「特定の食品に頼るより、全体のバランス」です。この前提を押さえたうえで、よく話題になる栄養素と食べ物の根拠を見ていきます。

よく挙がる栄養素の根拠はどの程度?

睡眠と関係が深いとよく紹介される栄養素について、研究の中身を整理しました。

栄養素研究でわかっていること主な食品
トリプトファンサプリメントで中途覚醒が減ったとする解析あり(4研究、1日1g以上が中心)肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
グリシン就寝前の摂取で主観的な睡眠の質が改善したとする報告あり(小規模)肉、魚介類(特にコラーゲンの多い部位)
GABA睡眠関連の機能性表示食品があるが、国の個別審査は受けていない発芽玄米、トマト、漬物

トリプトファン:サプリメント量での話

トリプトファンは必須アミノ酸の一つで、体内でセロトニンやメラトニンの材料になります。2022年に発表されたシステマティックレビューでは、トリプトファンのサプリメントで中途覚醒の時間が短くなったと報告されています。ただし解析に使えた研究は4件だけで、ほかの睡眠の指標には差が出ていません。量も1日1g以上で効果が見られたとされています。

普段の食事で、同じ量を意図的にとるのは現実的ではありません。食品からとる場合の効果は確かめられていないと考えてください。

グリシン:研究の多くは開発企業によるもの

グリシンはアミノ酸の一つです。就寝前の摂取で、不眠傾向のある人の主観的な睡眠の質が改善したと報告されています。動物実験では深部体温を下げる作用が示され、これが眠りやすさにつながる可能性があると考えられています。ただし、ヒトでの研究は小規模で、多くはグリシンを製造する企業の研究者によるものです。食品として肉や魚をとれば、特別に意識する必要はありません。

マグネシウムやビタミンB群は?

マグネシウムやビタミンB6、B12も「睡眠によい栄養素」として紹介されることがあります。体内でさまざまな働きを担う大切な栄養素ですが、食事でとった量で睡眠が改善するという十分な根拠は確認できませんでした。不足しないよう、海藻、豆類、魚、肉をバランスよくとることが現実的な対策です。

キウイ・バナナ・キムチ・チョコは睡眠に効く?

話題になりやすい4つの食べ物について、わかっていることをまとめます。

キウイ:研究はあるが小規模

台湾の研究では、睡眠に悩む20〜55歳の24人が、寝る1時間前にキウイを2個、4週間食べました。その結果、寝つくまでの時間が35.4%短くなり、睡眠時間が13.4%長くなったと報告されています。ただし対照群がなく、参加者は24人中22人が女性でした。「キウイで眠れるようになる」と断定できる段階ではありません。食後の果物として取り入れるのは、栄養面からも悪くない選択です。

バナナ:トリプトファンは含むが、直接の研究は乏しい

バナナにはトリプトファンやビタミンB6が含まれます。ただ、バナナ自体を食べて睡眠が改善するかを調べた質の高い研究は、確認できませんでした。朝食の主食や果物として手軽に使える、という位置づけで十分です。

キムチ:夜遅くは塩分に注意

発酵食品と腸内環境、睡眠の関係は研究が進んでいる分野ですが、キムチで睡眠が改善すると言える根拠は見当たりません。むしろ夜に気をつけたいのは塩分です。睡眠ガイド2023は、日中にとりすぎた塩分は睡眠中に排出されるため夜間の排尿回数が増え、減塩で夜中に目覚める回数が減ることが期待できるとしています。キムチ鍋のような塩分の多い料理を夜遅くに食べるのは避けましょう。

チョコレート:カフェインを含む

GABAを配合し、睡眠に関する機能を表示したチョコレートなどの機能性表示食品があります。ただしこの表示は、事業者が科学的根拠をもとに自らの責任で届け出たもので、国が個別に効果を審査したものではありません。また、チョコレートやココアの原料であるカカオ豆にはカフェインが含まれます。寝る直前に食べる習慣は避けたほうが無難です。機能性表示食品の見方は、睡眠の質と飲み物の記事で詳しく説明しています。

注意 睡眠のためのサプリメントを使う場合も、効果は人によって違い、医薬品ではありません。不眠が続くときは自己判断で続けず、医療機関に相談してください。

寝る前に食べても良い?夕食は何時間前まで?

食べ物の種類より、確実に睡眠に影響するのが食べる時間です。睡眠ガイド2023は次のように説明しています。

  • 就寝前の夜食や間食は、体内時計を遅らせ、翌朝の睡眠休養感や主観的な睡眠の質を下げる
  • 夜食や間食のとりすぎは肥満や糖尿病につながり、閉塞性睡眠時無呼吸のリスクも高める
  • 遅い夕食は朝食の欠食にもつながり、睡眠と覚醒のリズムを乱す悪循環を招く

ガイドには「何時間前まで」という数字はありません。本記事では、就寝の2〜3時間前までに夕食を済ませることを一つの目安にしています。

帰りが遅い日は「分食」にする

残業や会食で夕食が遅くなる日のために、ガイドは夕食を2回に分ける「分食」を勧めています。夕方に主食をとり、帰宅後はおかずを軽くとる方法です。

タイミング食べるもの(例)
18時前後(職場で)おにぎり1個、またはサンドイッチ
帰宅後(就寝前)豆腐の味噌汁、焼き魚や卵料理を少量、野菜のおひたし
避けたいものラーメンや揚げ物、締めのご飯、塩辛いおつまみ

どうしても寝る前に空腹で眠れないときは、温かい汁物やヨーグルトを少量にとどめます。脂っこいものや量の多い食事は胃にもたれやすく、夜食をしっかりとるのと同じことになります。

夜に控えたいもの

眠りを妨げる可能性がはっきりしているのは、食べ物そのものより次のようなものです。

  • カフェイン:コーヒー、緑茶、紅茶、エナジードリンク、カカオを使った菓子
  • お酒:寝つきは早まっても、睡眠の後半の眠りを浅くする
  • 塩分の多い料理:夜間のトイレの回数を増やす
  • 遅い時間の脂っこい料理や大盛り:胃にもたれやすく、夜食をとるのと同じことになる

朝食や寝不足は食事とどう関係する?

朝食は睡眠に関係します。睡眠ガイド2023によると、1週間ほど朝食を抜くと体内時計が遅れ、寝つきの悪化を通じて睡眠不足を招きやすくなります。朝食の欠食が睡眠休養感の低下と関連するという調査結果もあります。

朝の日光と朝食は、どちらも体内時計を整える合図になります。時間がない朝でも、バナナとヨーグルト、おにぎりと味噌汁など、何か口にすることから始めましょう。朝食の習慣づくりは朝食を習慣にする記事にまとめています。

寝不足の翌日は食欲が増えやすい

関係は逆向きにも働きます。健康な若い男性12人を対象にした米国の実験では、睡眠を2晩制限すると、食欲を抑えるホルモンのレプチンが平均18%減り、食欲を高めるグレリンが28%増えました。空腹感は24%高まり、特に菓子やパンのような炭水化物の多い高カロリー食品への欲求が強まったと報告されています。

小規模な短期間の実験ですが、「寝不足の日ほど甘いものや麺類に手が伸びる」という実感と合う結果です。睡眠ガイド2023も、睡眠不足が肥満のリスク上昇と関連する研究を紹介しています。食事を整えるには睡眠を、睡眠を整えるには食事のタイミングを、という両面で考えると続けやすくなります。

会食の多い日はどうする?

40代のビジネスパーソンは、会食で夕食が遅く、量が多く、お酒も入りがちです。睡眠への影響を減らすには、次の3点を意識します。

  1. 締めのご飯や麺は控え、遅い時間の食事量を抑える
  2. お酒は量を決めて飲み、寝酒の追加はしない(睡眠の後半の眠りを悪化させるため)
  3. 塩辛い料理を続けて頼まず、お酒の合間に水を挟む

会食での注文や飲み方の具体策は、会食が多い人の食べ方の記事を参考にしてください。睡眠時間そのものの目安は、40代男性の睡眠時間の記事で解説しています。

今日からやること

  1. 「睡眠に効く食べ物」を探すより、主食・主菜・副菜のそろった食事を1日2回以上にする
  2. 夕食を就寝の2〜3時間前までに済ませ、遅くなる日は夕方におにぎりをとる
  3. 寝る前の小腹には、温かい汁物かヨーグルトを少量だけにする
  4. チョコレートやココアを夜の習慣にしているなら、夕方までに切り替える
  5. 明日の朝食に、おにぎりと味噌汁など一品を加える

FAQよくある質問

Q寝る前にキウイを食べると睡眠の質は上がりますか?

睡眠に悩む成人24人が寝る1時間前にキウイを2個、4週間食べ、寝つきや睡眠時間が改善したという研究があります。ただし対照群がなく参加者の多くが女性で、規模も小さいため、効果があると断定はできません。果物の一つとして取り入れる程度に考えましょう。

Qバナナや牛乳でトリプトファンをとれば眠れますか?

トリプトファンのサプリメントで中途覚醒が減ったとする解析はありますが、対象は4件の研究で、量も1日1g以上が中心です。普段の食品で同じ効果が出るかは確かめられていません。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品を含むバランスのよい食事で十分です。

Q夕食は寝る何時間前までに済ませればいいですか?

睡眠ガイド2023は具体的な時間を示していませんが、就寝前の夜食や間食が体内時計を遅らせ、翌朝の休養感を下げると説明しています。本記事では就寝2〜3時間前までを目安にしています。帰りが遅い日は、夕方に主食を軽くとる分食が勧められています。

QGABA入りのチョコレートは睡眠に効きますか?

睡眠に関する機能を表示した機能性表示食品はありますが、表示は事業者が自らの責任で届け出たもので、国が個別に審査したものではありません。またチョコレートの原料のカカオにはカフェインが含まれます。寝る直前に食べる習慣にするのは避けたほうが無難です。

参考資料

  1. 健康づくりのための睡眠ガイド2023 厚生労働省(健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会)
  2. Effect of kiwifruit consumption on sleep quality in adults with sleep problems(Asia Pac J Clin Nutr. 2011) PubMed
  3. The impact of tryptophan supplementation on sleep quality: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression(Nutr Rev. 2022) PubMed
  4. New therapeutic strategy for amino acid medicine: glycine improves the quality of sleep(J Pharmacol Sci. 2012) PubMed
  5. Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite(Ann Intern Med. 2004) PubMed

この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。持病のある方、服薬中の方、体調に不安のある方は、医師などの専門家に相談してください。